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建築・インテリア

Vol.125 子供の頃に描いた「いえ」のかたち

2017.3.15

子供の頃の記憶のなかで一番ふるい記憶。
とうの昔のことで忘れてしまっていることでも、ふとしたことをきっかけに、懐かしい記憶を思い出すことがあります。それは例えば、子供のころに読んだ好きな本だったり。

 

先日、姪っ子にプレゼントする絵本を、本屋さんで選んでいた時のこと。
普段、本屋さんで子供向けのコーナーにいくことがほとんど無いため、はじめはどう探していこうかと手探りに思っていましたが、いざコーナーへ行ってみると「この本知ってる!」「あ、これ持ってたな~懐かしい」と気付けば子どもの頃に何度も読んだ馴染み深いタイトルの絵本を見つけては手に取っていました。

 

子供心に好奇心を掻き立てられた様々な絵本が、当たり前ではありますが、未だ現役として子供達に読まれ愛されているのだと思うと、何年経っても変わらないものがこのコーナーには沢山詰まっているな~としみじみと思ってみたりもして。

 

そんな中、特に好きだったこの絵本を見つけたとき「ある意味、いま自分がこの会社にいる原点なのかもしれないな」と少し感慨深い気持ちになったので勝手ながらご紹介したいと思います。

 

「おおきな きが ほしい」
作:佐藤さとる
絵:村上勉

 

ちょうど私が、幼稚園を卒業する頃に貰った絵本でした。

 

私が「家」や「暮らし」ということに初めて興味を持ったのはこの本がきっかけだったと思います。
「おおきな木があれば、こんな素敵なことが出来る」と主人公がいろんな想像を膨らませるストーリーなのですが、おおきな木を登った先にあるツリーハウスの描写が、当時の私が特に好きだったシーンでした。

 

■煙突の付いた山小屋のような平屋の外観
■1口ガスコンロのある小さいキッチンとまるい食卓テーブル、椅子
■たくさんの本が並べられた本棚
■ベッドのある寝室・・・
と、どこかワンルームマンションの一室のような雰囲気のツリーハウス。

 

 

村上勉さんのタッチで描かれているため素朴であたたかさがありつつも、細やかに描かれた部屋ディテールが、秘密基地のような遊び心に絶妙なリアリティをプラスしていて、挿絵のイラストを眺めているだけでも、ストーリーとは違ったストーリーが見え隠れして楽しめます。ツリーハウスといっても子供が描く夢としては少々現実的なところがまたこの絵本の良さだと思っています。

 

備え付けられた窓際の小さいキッチン。その窓から、見晴らしのよい景色を見ながら主人公がホットケーキを作る描写は、当時の私にとって、ままごとの一歩先をいく大人な雰囲気があり「私にもこんなことが出来ればな~」とイラストの主人公に自分を重ね描いて、あこがれたのを覚えています。

 

また、春夏秋冬の移り変わりを、分かりやすく魅力的に感じられるところも素敵です。

 

■四季折々に変わる窓越しの景色の色
■暮らしに関わる扇風機だったり暖炉などのアイテム
■遊びにやってくる動物や昆虫・・・

と、季節ごとにツリーハウスでの暮らし方に違いが出ていて、それを間違いさがしのように探したりして「春は、花がたくさん見えるカラフルなところもいいけど、秋の赤や黄色にそまった景色もいいな~」とうっとりしたりもして。

 

当時、この本を何度も読むうちに、自分で自分の住む理想の家を考えてみたくなり、色えんぴつで模造紙いっぱいに書いたことがありました。

 

「ここにキッチンを置いて、ここにテーブルを、窓際にはソファを置こう!」
そんな風に絵本の中の世界と頭のなかに広がる想像を混ぜ合わせながら、実際に紙に描いていくのが楽しくて何枚も何枚も書いていました。

 

暮らしを想像しながら実際に形にしていく。
そんな、ものづくりや家づくりの楽しさや面白さに、子供ながらに惹かれていた気持ちが、今ここで働いている私のいちばん初めの原点なのかもしれません。

 

そんな風に、子供の頃の記憶を通して今の自分がこっそりと顔を出して見えてくることがあります。絵本にはそんな、大人達の様々な思いの原点が眠っているのかもしれません。

 

担当:事務

 

 

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