『平成26年度 土地問題に関する国民の意識調査』(平成27年7月9日公表 国交省)の中で、
「住宅の所有に関する意識について」に対する回答の内「土地・建物については、
両方とも所有したい」が79.2%でダントツの数字でした。
過去の調査でも、平成5年の調査開始以降「土地・建物の両方とも所有したい」
という意向は常に80%前後です。
国民の約8割が「住宅は持ち家がいい」と考えているということです。
その理由についても1位、2位はずっと同じ内容になっています。
1位 「子供や家族に土地・建物の形で財産を残したいから」・・・52.7%
2位 「土地・建物は他の資産と比べて有利な資産だから」・・・34.5%
やはり日本では「土地・建物」は「財産」であり、「有利な資産」だという
意識が強いように思われます。
しかし、「土地は本当に資産なのか?」という問いを見てみると、
実はそう思っている人は減っています。
「資産としての土地」についての調査結果では
「土地は有利な資産だと思う」・・・30.3%
「土地は有利な資産だと思わない」・・・40.1%
「どちらともいえない」・・・25.6%
「土地は有利な資産か?」と聞くと、「有利だ」と思っている人よりも「有利ではない」と
思っている人の方が多いということになります。
ちなみに20年前、平成6年の同調査では「土地は有利な資産だと思う」・・・61.9%
「土地は有利な資産だと思わない」・・・21.9%
「どちらともいえない」・・・12.5%
「土地は有利な資産だ」という人が6割以上もいました。
それがこの20年間でそのように考える人が半減してしまったと言うことです。
ではこの20年間に何があったのでしょうか?
言うまでもなく「土地は持っているだけで値段が上がり続ける」という「土地神話」が終わったからです。
土地の価格は戦後一貫して上昇していましたが、80年代に入るとその勢いが急激になり、
80年代後半の「バブル期」にはほんの数年で地価が2~3倍ほどにもなりました。
しかし、1991年にピークを迎えた後は一気に値下がりし、以降20年以上にわたって下落し続けています。
20代30代の「バブルを知らない世代」にとっては「土地の価格は下がるもの」
ということの方が常識なんだと思います。
しかも、土地・建物などの不動産には持っているだけで税金がかかります。
何も使っていない土地に対しては、固定資産税評価額に対して固定資産税が1.4%、
都市計画税が0.3%(地域により異なりますが)合せて1.7%が毎年課税されます。
この固定資産税と都市計画税分だけ資産価値的には目減りしていることになります。
計算しますと、何も使っていない土地の地価上昇率がゼロだとすると、約68年で今の時価と
同じ程度の税金を納めることになります。つまり、その土地は資産価値的には約68年で消えて
無くなってしまうということです。
金融資産に対しては、それが現預金であろうと株式であろうと債券だろうと、
また金額がいくらであろうと、その「元本」には一切課税されません。
金融資産を保有していて課税されるのは、運用して得られた果実(利息や差益)に対してです。
ですから金融資産は、銀行預金やタンス預金など「目減りを防ぐためにリスクを取らない」
という選択ができます。
しかし、土地や建物などの不動産は所有しているその不動産そのものに対して、
固定資産税や都市計画税が課税されます。いわば「元本」に対して課税されるようなものです。
つまり不動産の場合は、遊休地などで何も使わずにおいておくと毎年の固定資産税と
都市計画税の分だけ資産価値という名の「元本」が減っていくのです。
運用しなければ目減りしていく資産と言えます。
前の質問で「土地は有利な資産である」と答えた方(30.3%)に「なぜそう思うのか?」と質問しています。
その結果は、土地を有利な資産と考える理由
1位 「土地はいくら使っても減りもしなければ古くもならない、なくならない」・・・36.7%
2位 「土地は生活や生産に役に立つ」・・・20.9%
3位 「価格の変動リスクの大きい株式等に比べて、地価が大きく下落するリスクは小さい」・・・16.8%
土地は資産として減らないし無くならない、役に立つし、資産価値の下落リスクが小さい、
というのが理由です。
これはその通りですが、最近は土地の価格は安定していますし、
一部の都市部では数%ですが上昇しているところもあります。
そして、使うことが出来ていればやはり不動産は有効な資産です。
自宅なら固定資産税は軽減されます。売りに出せばすぐに買い手がつく不動産、
賃貸に出せばすぐ借りてもらえる不動産なら「資産」です。
でも、何も使わないのなら、税金などの維持コストはかかるし、地価下落リスクもあります。
そうなると資産というより、もはや負債ですね。
最後の質問は、「身近に感じる土地問題などについて」です。
1位は、「空き家・空き地や閉鎖された店舗などが目立つこと」・・・50.2%
本当に「不動産は活用してこそ」の資産だとつくづく思います。
所有しようという場合には長きにわたって使える不動産なのかどうかをよく考えて選ぶべきですね。
記事担当:営業課