昨今の住宅は、シンプルな箱を組み合わせたようなデザインが多く、特に軒のないデザイン等を良く見かけます。
もちろん弊社でもお施主様のご要望により、軒を出さないデザインを求められる事がたまに有ります。
一見、シンプルでスタイリッシュに見えるのですが、実は、この軒にはとても重要な役割があるのです。
一つ目は、日射を遮蔽する役割です。
四季のある日本では、日差しは、夏は高い位置から差し込み、
逆に冬は低い位置から長く延びるという特徴があります。過ごしやすい気候の時には、
陽だまりで過ごす時間は極上ですが、そうでない日ももちろんあり、
特に真夏の日差しは邪魔者でしかありませんよね。
そんな時、陽の光をうまく調整してくれるのが軒です。夏の高い日差しは遮蔽して涼しい空間を作り出し、
冬の低い日差しは部屋の中まで導くのです。
二つ目は、雨除けの役割。
雨の多い日本では、年中外壁や窓は雨にさらされます。
完全にとは言えませんが、雨の日に窓を開けていたとしても、室内に直接吹き込む事を軒が軽減してくれます。
また、帰宅時や外出時などのちょっとした雨よけとしても大変重宝します。
三つ目は、窓辺の汚れを軽減する役割。
二つ目の役割であげたように、軒があることで直接雨が当たりにくくなると同時に、
埃等も付着しにくくなるので、窓に雨垂れの後が付きにくくなります。
雨の日の後の、余計な手間が少し軽減するかもしれませんね。
因みに沖縄地方では、軒の代わりに窓辺に格子の様なブロックを積んでいます。
これは、寄り強い日差しを遮蔽する為と、関西より強い台風が直撃する事が多い地域の建物の特徴です。
軒以外にも、建物の一つ一つのデザインには、意味や役割が有ります。
昔の住宅は必ず軒がしっかり出ていて、軒の高さと塀等の高さのバランスが整えられた美しい建物が沢山有ります。
建築をする上で、本来の意味をちゃんと理解し、提案するということは設計士として当たり前のことだと思います。
これからもお施主様にとって「本当に良い住まい」を提供して行ければと思います。
記事担当:設計課