先日、久しぶりに京都にいってきました。
以前、3年間ほど住んでいたこともあり、有名な観光名所はある程度見てきたつもりだったのですが、
さすが歴史ある町なだけあって、知らないことはまだまだ山のようにあるなと感じた1日でした。
京都の代表的な町並みといえば、鴨川周辺を連想する方も多いのではないでしょうか。
季節、時間に関係なく等間隔に人影が連なる光景や、夏の風物詩にもなっている
納涼川床などは全国的にも有名ですよね。
個人的には、そのすぐ横の木屋町通りの雰囲気が好きで、住んでいた頃は
よく川沿いのcafeやbarを探索したものです。
ここの通りに風情をそえるのが、「高瀬川」。
京都に行ったことがある方なら一度は目にしていると思いますが、
この川が人工的に開削された運河だということを知る人は少ないのかもしれません。
高瀬川は、江戸時代に京の中心部と伏見を結ぶため、嵯峨の豪商角倉了以(すみのくらりょうい)により
鴨川を分流して開削された運河で、当時は京都と大阪を結ぶ主要な物流手段でした。
開通後、高瀬舟の運航を管理していた角倉家が川の上流に屋敷を置き、今の角倉了以別邸跡となったそうです。
今でも、飲食店に姿を変えてはいるものの、当時に近しい状態で屋敷は残されています。
東の鴨川から西の高瀬川へ流れ込む豊富な水量の川が庭を走り、川には橋が架かり、
滝口が組まれ、樹齢200年というムク・楓など多くの樹木が植えられています。初夏になると蛍も飛び交うほど。
町の中心部にありながら、騒然とした雰囲気は一切なく、
昔の京の町をそのまま切り取ったかのような空間が広がっていました。
昔の事情を知る方いわく、屋敷の所有権移行の際に、屋敷を取り壊しホテルの駐車場になる計画もあったそうで、
京都の風情を後世に残すべく、そのままの状態で引き継いでくれる今の所有者に委託されたそうです。
それ以降、庭園は一般公開されており、高瀬川ができた由縁や運河の歴史を訪れた人に語り継ぐ役割を担っています。
京都に限らず、街の景観には何らかの意味があって現存しているものも多いのではないかと思うのです。
たとえ人工的に作られたものであっても、歴史があったり意味があったり。
IDA HOMESが家づくりを進める上で大切にしていることに「敷地をよむ」ということがあります。
これは、単に敷地形状を把握して建物を設計するだけでなく、街の景観や周辺環境、
その地歴史的背景などを把握し、その土地の本来の姿を最大限に生かせるよう計画を進めます。
自分の理想を形にすることはもちろん大切ですが、その地その地のあるべき姿を残した家づくりに
少し耳を傾けていただければ幸いです。
記事担当:広報